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令和・囲碁美人 ファイルナンバー1

 男女を問わず、囲碁に興じ、盤上の石の配置に思慮する姿は何とも美しいと感じます。特に、振袖を着た女性が囲碁を楽しむ様子は、何とも優雅で美しい印象を与えます。ここでは、アンティーク振袖を着た女性の姿を残しておこうと、このシリーズをスタートいたしました。第1回目は、囲碁ファンなら誰でも見覚えがありますね。囲碁ファンでない方でもご存じの方は多いと思います。そうです、ダイアナ・ガーネット(Diana Garnet)さんです。

 アメリカ生まれでアメリカ国籍の彼女を、このシリーズの始めに紹介する理由は、彼女が日本人以上に日本人的な面を持っているからです。彼女とのやり取りのいくつかを紹介いたします。

やり取り①

X:「…飲み物は、コーヒー、紅茶、日本茶、ジュース…、何にする?」

Diana:「日本の服装をする時は日本茶でしょう~!」

何でもないやり取りですが、これから振袖を着ることに対する日本人への何気ない配慮でありリスペクトであります。取り立てた世辞ではなく、何気ない会話の中でさりげなく示す配慮が彼女との会話ではそこかしこに散りばめられていて、接する人間誰をも魅了してしまいます。そこが彼女の最大の魅力でしょうか。

やり取り②

X:「…日本にずっといるの…?」

Diana:「…日本でお墓をつくるの…」

日本が大好きで、今後もずっと日本にいたいという気分を表現する際に、このような言葉を選んだ訳ですが、日本人の皆さんはこのことをどのようにお感じですか?お墓をつくることの良し悪しを述べようということではありません。何とも日本人的な表現であり、日本人的心理描写だと感じませんか。ともすると、失いかけてしまいそうな、良き日本の精神文化を思い出させてくれたようで、理屈抜きに嬉しいような有難いような不思議な気分にさせてもらいました。

やり取り③

Diana:「…囲碁をやる人はみな純粋な人たちだよね…」

囲碁をやらない方、済みません、しばらくお付き合いください!タレント活動に忙しい彼女は、芸能界で色んな方と接し、色んな場面を経験しているはずです。そんな中で、囲碁をやる人間は明らかにそうでない人間と異なった人種であると捉えているようです。囲碁のプロ棋士でない限り、囲碁が強かろうが弱かろうが、勝とうが負けようが、特に何かに影響することはありませんね。

しかし、このような禅問答があります。

X:「座禅をすると何かいいことがあるのですか?」

禅僧:「座禅をしても何にもならんぞ!」

X:「では、なぜ座禅なんかをするんですか?」

禅僧:「何にもならんからするんじゃ!」

いかがですか。現代人は、何かをする際にどうしても、”それでどうなる(つまり、それでどんな利益があるのか)”とつい考えてしまい、利の無いことをしたがらなくなってしまう傾向にあるのではないでしょうか。『”利を念頭に置くことはなく、美的・数理的性質を持つ知的ゲームである囲碁”を趣味とする人間はどこか純粋な面を持つ』というダイアナの人間観察は、何とも的を得ていると思われます。

 やはり、『令和・囲碁美人シリーズ』の、トップバッターとして相応しい方ではないでしょうか。

 

平成31年3月24日、Eテレ放送「囲碁フォーカス」最終回『ダイアナの卒業式』もご覧ください!