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ファイルナンバー4 Mさん

 

アンティークの振袖姿で碁盤に向かう女性の様子を紹介しています。今回は、お名前もお顔も伏せるというお約束で、振袖姿だけを紹介させて頂きます。多摩地域にお住まいの明るいOLさんです。本当にいつもにこやかにされていて、ご本人は何かをされる時は本人なりに真剣になるのですが、顔が笑い顔のせいか、いつも「もっと真剣になりなさい…」と言われてしまうようです。仮にMさんとしておきましょう。

 

振袖の柄を見る際に、地の色とその地の色の上に描かれている模様を分けて見ていただくといいでしょう。今回は、振袖の柄・絵模様のベースとなる地の色についてお伝えしようと思います。地の色は

 

 1黒系 2ブルー系 3紫系 4緑系 5赤系 6ピンク系 7黄色系

 

など何種類かに分けられますが、さらにシンプルに、

  

  黒系   か  ブルー紫緑赤ピンクなどの色系

 

かの2種類で考えてみましょう。“黒地”という言葉だけを聞くと、どうしても地味で華やかさに欠けるのではないか、との印象を持たれるのではないでしょうか。それは少し違います。よく考えて見て下さい。地色の上にメインの模様が描かれるので、それ自体が主張しない色の方が地色としては適しているのです。色系の地はそれ自体が色の主張をしますので、その上に描かれる絵の色が限定されてしまい、模様や色の選択が案外難しく、一歩間違えるととんでもない配色になってしまいます。その点、黒にはどんな色も相性が良く、特に赤やピンクや黄色などで描かれた模様を引き立て、模様の華やかさを際立たせてくれます。

 

 黒地が良くて色系の地色が劣るということでは決してありません。黒地は模様の色や形を引き立て、全体がシックで落ち着いた雰囲気の中にも華やいだインパクトを与え、写真写りも良い地色であることには間違いありません。しかし、色系の地色も、その地色とマッチしうまく生かすような色や模様の場合、色の効果はぐんとアップします。ブルーとか赤とか、特に自分の好みの色がある場合はその地色を選んで頂いて大いに結構でだと思います。特に自分の好みの地色はない、あるいは、どの地色を選んだらよいか分からない、そんな場合は黒地を選ぶことをお勧めします。

 

 さて、Mさんの振袖を見てみましょう。地色の赤は、今の化学染料の光るようなけばけばしさは全くなく、メインの模様や色ともマッチしています。やや明るいガランス色は、まるで村山槐多の絵の少女像を連想させますね。アンティークの着物は時間と共に味わいを増して行きますので、これから先も美しさを伝えて行きたいものです。